揺りかご検事のマンションで借りてきたDVDを見始めてどのぐらいの時間がたっただろうか。 珍しく重なった休みを1日部屋で過ごすのもどうかと思ったが、主である響也にそう望まれ食料を買い込みテレビの前を陣取った。 コメディ、アクション、ホラー、ラブストーリー。 長い間見続けていた所為か、一番の見せ場であるシーンでくあっと欠伸が零れ落ちる。 「つまらない?」 「いえ、そういうわけじゃ」 「目が言葉を裏切ってるよオデコくん」 笑いながら添えられた指先に視線を細めれば、そっと瞼を親指の腹で撫でられた。 欠伸をした所為で滲んだ涙を掠め取っていくそれに、ほっと吐息が零れ落ちる。 「疲れた目をしているね。いや、どちらかというと眠そう、かな」 「はぁ・・」 ブラウン管を見続けた所為で、疲れた目が自然と内側から眠気を誘い出していく。 それを考えるとどちらにしろ似たような意味だと軽い返事を返し、すみませんと小さく告げた。 一度欠伸してしまうとどうにもこうにも止まらない。 続けて何度か繰り返せば、誘発されて身体が眠りを訴えゆらりと検事の方に傾いた。 「付き合わせて悪かったね」 今日はこのぐらいにしておこうと、揺らいだ身体を受け止め検事が苦笑を滲ませた。 手際よく手元のリモコンでスイッチを切るのを横目に、もう一度すみませんと呟く。 暖かい腕に包まれてしまえばその温もりに慣れた身体がすっかり睡眠体勢へと変わり、 「ベットに行くかい?」という検事の言葉に緩く首を振り「ここでいい」と身じろいだ。 正直歩くのが面倒なぐらい眠い。 そんな事言えば、この検事の事だ。 恥ずかしげもなく抱き上げて運んでくれるだろう事は目に見えている。 恋人同士なんだからいいじゃないか、という考えに男同士でそれはどうなんだなんて意見今更通用しない。 ならばおとなしく何も言わずここで寝てしまえと、慣れた脳が判断を下した結果だった。 「検事」 「うん?」 「・・・・膝、かしてください」 「・・・オーケイ」 膝枕。 いつもなら検事にねだられ、膝を提供するのは自分の方だ。 仕事量的に、比べるのも虚しいが検事の方が圧倒的に多く疲労もそれに比例する。 夜遅く尋ね、「膝を貸してくれないか」と甘えを見せる姿が時折あったものだが、まさか自分がねだる日が来ようとは。 クッションを借りるかソファを借りて寝るという手もあったのに、何故膝枕を選んだのか。 (気持ちよさそうだから、かな) 自分の膝の上で寝入る検事を何度も見てきた。 ベットの方がいいのではと出した提案も却下され、「わかってないねオデコくん」と意味ありげに笑われた事もあった。 その時はまったくわからなかった事も、今この状況になって少しだけ理解した気がする。 決して寝心地が良いとは思えないのに。 (そりゃそうだ、成人男子の膝の上だぞ) ゴロリと横になった俺の髪を検事の手が優しく撫でていく。 時折くすぐったさに身を捩れば、代わりにぽんぽんと背中をあやすように叩く手にホウっと息を吐き出した。 部屋着にしては上質な生地のスラックスに、頬を擦り付け顔を埋める。 寝やすいように足を崩し調整してくれる検事の気遣いに薄っすらと笑みが浮かんだ。 優しい温もり。 甘い匂い。 「おやすみ、オデコくん」 耳を擽る声に、返事の代わりに検事の手をそっと握った。 まるで揺りかごのような心地よい温もりに誘われて。 (安心して眠れそうだと思ったんだ) ファイルから発掘 なんだか響也のがいい思いしてる気がする。 |