Refusal






足元に擦り寄る野良猫を抱き上げ、優しくその毛並みを撫でた。
『猫と検事ってなんか似合いますね』なんて不思議な賛辞を受けつつ、響也は思った事を口にする。


「考えてる事がわかればいいのにって思わないかい?」
「でも、なんとなくわかりませんか?今なんか、遊んで欲しいって言ってる気がするんですけど」


響也の腕の中で気持ち良さそうに喉を鳴らすその身体を、法介は隣から手を伸ばしてそっと触れる。
野良猫にしては柔らかい毛並みに思わず微笑めば、腕の中から抜け出した猫が法介の膝へと移動してきた。
指を小さな舌でぺろぺろと舐める仕草に、可愛いなぁと声が零れる。
優しく撫でれば優しく舐められ、戯れる二人(正確には一人と一匹)を見て響也は自分の眉が僅かに寄せられていくのを感じた。


(猫相手になんて事だ)


紛れもない嫉妬という感情に、ひっそりと額を押さえ溜息を吐き出す。
そんな響也の気持ちなど知らず、法介は懐いてくる猫にまれに見る機嫌の良さだった。

猫も法介を気に入ったのだろう。
先程なんとなく、と曖昧な例えではあったが、この光景を見ていると確かに猫の気持ちが判る気がする。
わかればいいのにと言っておきながら、実際あまり必要の無い事だと思い知らされた。


本当に知りたいのは猫なんかじゃなくて。


「オデコくんの考えてる事も、わかればいいのにな」


何を考えているか、どんな事を感じているか。
全部知りたいと思ってしまう独占欲が、思わず響也の口をついて出た。
そんな響也の言葉に、猫を撫でていたホウスケがパチリと瞬きして見つめてくる。
向けられる視線に一瞬気まずさを覚えたけれど、法介の様子から呆れてはいないようなのでモゴモゴと言葉を続けた。


「猫よりも、僕はオデコくんの事の方が知りたいよ」
「俺は検事に考え読まれるなんて嫌ですね」
「・・ハッキリ言うね、キミ」


速攻で返された言葉、しかもどちらかと言うと拒絶に近い言葉に項垂れても仕方ないだろう。
きっとここが公園では無く自室であれば、膝を抱えて拗ねてしまいそうな響也に、だって・・・と法介が言葉を続けた。


「今俺の頭の中、―――響也さんでいっぱいですから」


読まれたら恥ずかしいでしょ?


言葉とは裏腹に、法介の口元には挑発するような笑みが浮かんでいた。














あぁ、僕も今だけは読まれる事を拒否するよ
(いつも以上にキミの事でいっぱいな僕を、きっとキミは笑うだろうから!)






案外響也より法介のが上手だったりする