着信拒否





「忙しいんで、もう切りますよ」
「オデコく・・っ」


言葉の途中で、プツリと通話を切った。
ツーツーツーと虚しい音が聞こえてくるが、ボンヤリしてる暇は無い。
俺はすぐさま携帯から検事のメモリを引き出すと、着信拒否設定にして机の上に放り投げた。
別に検事が嫌いだからとかそういうわけじゃなくて、少し鬱陶しかっただけなんだ。


(まぁ、それを言ったら酷いよ!と泣かれそうだから言わなかったけど)


大体あっちの方が忙しいはずなのに、電話を掛けてくる回数が多すぎる。
俺が強制的に切って終わる事がほとんどで、酷い時には5秒で切った時もあった。
それでも掛けてくるのだから根性があるというか、執念というか。
今日だけでも相当の数が鳴った気がする携帯にソロリと手を伸ばし、
着信履歴を確認して見なければ良かったと即効で後悔した。


別に電話が嫌なわけじゃない。
たまに、ならいいんだ。
たまに、なら。


(たまにで済まないのがあの人らしい、というか)


好きだからとかそういうレベルを超えてるんじゃないかと額を押さえながら、深い溜息を零す。
そんな憂鬱な気分も、たった今着信拒否にした事で終わりを告げるのだ。
これで暫くは静かに仕事が出来ると、気持ちを入れ替える為珈琲でも淹れようと立ち上がった瞬間――


「オデコくん!!!!」

「・・・・は?」


バァン!と勢いよく事務所の扉を開けて入ってきた検事に、俺はポカンと中腰のまま口を開けた。
足早に近づかれ、ガッと肩を掴まれたところで反応の遅れた脳がようやく状況を理解し言葉を吐き出させる。


「何で此処に居るんですか、検事」
「オデコくんが着信拒否するからじゃないか!」


酷いよ!と言葉では責めるくせに、身体は俺を抱き締め満足そうだ。
髪に顔を埋めて擦り寄られ、せっかくセットした髪が台無しになってしまった。
電話で何度も何度も、それこそ着信拒否したくなるぐらい聞いた声が直接鼓膜を震わせる。
そんな状態で数分、いい加減ウンザリし始めた俺に、検事がさも良い考えだとばかりに言い出した。


それはそれは、見事なウインク付きで。


「電話がダメなら、直接会いにくればいいんだよね!」



毎日来てもいいかな?と笑って顔を覗き込んでくる検事に、俺は即効その場で着信拒否を解除した。












ホント勘弁してください
(声だけでも厄介なのに!)



そこに愛はあるのかっていう。あります。
こういうノリの二人が一番好きかもしれない。