二人の休日
「えっと…つま、り?」 「ご飯食べに行こうよ。オドロキ君の奢りで」 「いやいやいや、おかしいでしょそれ!」 成歩堂さんが暇だからと、俺をつれ回す事は今までに何度もあった。 こっちの予定なんかお構い無しで、当日の朝になって言ってくるからタチが悪い。 (でもそれで毎回付き合ってしまう俺も、なんだかんだで甘いというか…自業自得って言うのか?) 今日も洗濯機を回してる途中でチャイムを連打され、出てみれば成歩堂さんがポケットに手を突っ込んで立っていた。 わざわざこの寒い中来てくれた事は嬉しいと思う。 このまま出掛けるのだって、まぁ、ぼけっと洗濯してるぐらいだから俺も相当暇だし文句は無い。 だけど余計なオプション付きでの外出は遠慮したかった。 「あのですね、俺そんな稼いでるわけじゃないんで」 「異議あり!少なくとも僕よりは稼いでるはずだ」 「そこ、自信満々に言う事じゃないですからね!」 ビシッ!と突き付けられた指先は法廷に立った姿を彷彿とさせる。 それは俺が憧れた弁護士成歩堂龍一その人で、一瞬言葉を詰まらせた。 (って言っても同一人物だけどさ) それでもツッコミだけは忘れない俺に、あははっと笑う成歩堂さんにはすでに勝負の行方が見えてるようだ。 「オドロキ君、最近検事くんとばっかり遊んで僕と遊んでくれないじゃないか」 これでもね、少し淋しかったんだよ? たまに重なった休みぐらい付き合ってくれてもいいだろ、と。 顔を覗き込んでくる、普段はニット帽の奥に隠れた瞳に射ぬかれた。 ズルイ。 この人は、俺がこの目に弱いのを知っている。 細められる笑いを含んだ眼差しに、素直に頷いてしまいそうになる。 だけどそれを言うならこっちにも言い分があるんだぞ、と、俺はその瞳を真っ直ぐに見返した。 「異議あり!ナルホドーさんだって、神乃木さんと一緒の時は俺と遊んでくれないじゃないですか!」 「それって、オドロキ君も僕と遊べなくて淋しかったって受け取っていいんだよね?」 「うっ!…や、それは…!」 突き付けた言葉は、自分に不利な証言となって成歩堂さんの笑みを深まらせる。 (うぅ、どうしようもねえ) 思わず零してしまった本音。 子供じゃないのだから「遊んで欲しい」とまではいかなくても、「一緒に居たい」と思っていたのは紛れもない事実だ。 検事と遊ぶのは好きだ。 みぬきちゃんと遊ぶのも好きだ。 だけど――――― 「僕はね、オドロキ君と遊べないと寂しいよ?」 誰かと比べるわけじゃない。 相手がアナタ(キミ)だから言える事がある。 出来る事がある。 「だからさ、今日は一緒に居ようよ」 顔を寄せて、笑って、くしゃりと髪を撫でてくる指先。 あぁ、いつだってこの人に振り回されてばかり。 (でもそれが嫌だとは思わない) だって一緒に居られる事が嬉しくて。 会えない日が続くと――寂しくて。 『オドロキくん』 だから、本当は、いつだってアナタの言葉を待っているんだ。 「…奢るのは今回だけですからね!」 出掛けるなら早くしましょうとまくしたてる俺の顔はきっと林檎より赤いかもしれない。 案の定成歩堂さんに「林檎食べたくなったよ」とからかわれ嫌な汗が流れる。 それでも久々に二人並んで歩く外の景色はいつもと違って見え、何だか嬉しくなって自然と笑みが浮かんだ。 ゴドナル、響王前提なんだろうなこれ。
遊びに行く二人もえ。 |